補助金/助成金情報

これから事業を起こす、もしくは既に行っている事業を持続・拡大するにあたって助成金・補助金に関する基礎的な知識をもっておくことは、とても有益です。

本記事では、補助金・助成金の基礎知識や活用のポイントなどを、現役の社会保険労務士が解説しています。特に中小零細企業の経営者・オーナーの皆様や、個人事業主・フリーランスの方が押さえておくべき知識をわかりやすく解説していますので、事業活動に是非お役立てください。

補助金・助成金とは?

事業の実施・継続において「人・もの・金・情報」の4つが経営資源として挙げられます。これらのうち、主に「人」についての支援を行うのが助成金、「もの」についての支援を行うのが補助金です。

大まかなイメージとしては、補助金は生産設備や業務用ソフトウェアの導入費用などが対象となります。

最近ではECサイト構築費用、キャッシュレス決済システム導入やインボイス対応の経理システム等の導入費用などが対象になっている補助金もあります。

一方の助成金は、ハローワークを通した人材の新規採用や、既に雇用している従業員の労働環境整備、人材育成等の取り組みを対象としています。

一部上記の分類に当てはまらず、「もの」を対象とする助成金、「人」を対象とする補助金もありますが、このページでは、イメージしやすいよう「もの」を対象とするものを補助金、「人」を対象とするものを助成金として解説を進めます。

補助金・助成金の違い

補助金・助成金の概要は既に紹介した通りですが、手続きでも大きく異なる点があります。

受付(申請)期間について

補助金は、周知から受付開始、受付終了までが比較的短いです。

中には受付期間が1週間程度と極端に短いものもあります。

一方の助成金は、原則として通年で実施されていますので、補助金に比べて余裕をもって申請をすることが可能です。

審査タイミングについて

補助金には審査が2回あります。

1回目は事業実施前に行われ、主に事業計画の有用性等について審査されます。

2回目は事業実施後に行われ、実施内容・支出した経費が事業計画と相違していないかについて審査されます。

一方の助成金は、一部補助金の性質をもつ助成金を除き、所定の要件を満たしているかの事後審査のみとなります。

審査基準について

補助金の審査は「相対評価」です。

学校のテストで言えば「〇点以上」とするのが絶対評価、「上位〇%」とするのが相対評価です。

補助金には「予算」「採択率」に上限が設けられていますので、相対評価でより優れたものを採択する方式になっています。

よって、申請の結果、不採択になったものでも、その後別の期に改めて申請した際に採択されることもあります。

一方の助成金は、支給要件を満たせば受給できるため、「絶対評価」に近いと言えます。

ただし、「〇点以上」なら支給、というものではなく、支給要件について〇×審査を行い、すべて〇であるものについて支給が決定されます。

予算の制限や他者の申請との競合を避けられない補助金と異なり、助成金は予算不足で打ち切られる、支給されないということはなく、要件を満たせば支給されます。

実際、新型コロナウイルス感染症拡大による会社休業を助成する雇用調整助成金は当初予算額の数百倍にも及ぶ補正予算での対応となっています。

国が実施する補助金・助成金

国が実施する補助金・助成金で、スモールビジネスでの活用を検討したいのは、経済産業省の補助金、厚生労働省の助成金です。

国が実施するものは、後に解説する地方自治体が実施するものに比べて業種、地域の限定がないため、まずは国が実施するものから活用を検討するのがいいでしょう。

経済産業省(中小企業庁)の補助金

中小企業庁では、中小企業を育成・発展させ、経営を向上させることを目的として補助金を含む支援事業が多く用意されています。

また、受け取れる金額について、投じた費用の◯分の一、もしくは◯%の補助率が設定されているのが特徴です。

そんな経済産業省の補助金の中でも利用されることが多いのが次の4つの補助金です。

事業再構築補助金

対象新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築を支援

事業再構築補助金

ものづくり補助金

中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的な製品・サービスの開発、 生産プロセス等の省力化を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援

ものづくり補助金

IT導入補助金

中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援

IT導入補助金

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者自らが作成した持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取り組みを支援

小規模事業者持続化補助金

以上のほか、経済産業省が実施する補助金についてはこちらのページをご覧ください。

ミラサポPlus

厚生労働省の助成金

厚生労働省では求職者の就業機会の確保、労働環境の整備、労働者のキャリア形成等を目的とした助成金が数多く用意されています。

補助金とは異なり、助成金ごとに受け取れる金額が決まっているのが特徴です。

そんな厚生労働省の助成金の中でも利用されることの多い助成金を2つ紹介します。

トライアル雇用助成金

職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を、無期雇用契約へ移行することを前提に、一定期間試行雇用(トライアル雇用)を行う取り組みを支援

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省

キャリアアップ助成金

有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するための正社員化、処遇改善の取り組みを支援

キャリアアップ助成金|厚生労働省

以上のほか、厚生労働省が実施する助成金についてはこちらのページをご覧ください。

事業主の方のための雇用関係助成金|厚生労働省

地方自治体が実施する補助金・助成金

ここまで国が実施する補助金・助成金をメインに解説してきましたが、ここからは地方自治体が実施するものについてもいくつか紹介していきます。

なお、先に解説した補助金・助成金の区別(「もの」を対象とするものが補助金、「人」を対象とするものが助成金)について、地方自治体の実施するものは国のものに比べその分類が曖昧なものが多いです。

ただし、引き続き、国と同じように設備投資等を対象として補助率が設けられているものを補助金、雇入れなどを対象として一定の金額が明示されているものを助成金と区別することで情報収集がしやすくなるかと思います。

東京都の補助金・助成金

商店街起業・承継支援事業

商店街における開業者や事業後継者の育成及び開業等を支援し、都内商店街の活性化を図るため、都内商店街で個人又は中小企業者が開業等をするにあたり、必要な経費の一部を補助

助成金事業 | 東京都中小企業振興公社

その他自治体でよくある補助金・助成金

国の支援対象が広く事業全般であるのに対し、自治体の支援は地域産業や農林水産業の振興、名産品の訴求、販路拡大等が対象になるものが多い傾向にあります。

ここでは一例をご紹介します。

神奈川県スマート農業推進事業(神奈川県)

担い手の減少や高齢化が進行し、農業産出額が減少する中、これらの課題に対応し、解決することを目的としたスマート機器の導入を支援

企業支援・補助・融資 – 神奈川県ホームページ

田原本町特産品等開発事業補助金(奈良県田原本町)

訴求力の高い商品の開発を促進し、地域の稼ぐ力を引き出すため、町の資源を活用して新たな特産品等の開発への取り組みを支援

商工|奈良県磯城郡田原本町

ユニークな補助金・助成金

これまでの解説の通り、自治体の補助金は地域産業の活性化を目的として実施されるものが多いです。

過去の事例ではありますが、時代の流れを取り込んだユニークな補助金を紹介します。

マスメディア・SNS発信促進補助金(山梨県南アルプス市)

テレビ・新聞等のマスメディアやユーチューバーなどのインフルエンサーが本市で行うコンテンツ制作、発信が対象

このように、自治体の実施する補助金・助成金はバリエーションが豊富ですので、是非定期的にチェックすることをおすすめします。

補助金・助成金活用のポイント

最新の情報収集を怠らない

補助金・助成金を活用する為には最新の情報収集が欠かせません。

特に補助金は募集期間が短く、募集を知った時点で募集が終了していることがよくあります。

一方で助成金は通年で実施されるのが原則ですが、年度途中で要件が変わることも少なくありません。

いずれにしても常に最新の情報を収集することが大切です。

全ての費用がカバーされるわけではない

補助金・助成金はあくまで要した費用の一部、もしくはあらかじめ定められた一定の額を受け取れるものです。

そのため、補助金・助成金を活用する場合においても、設備投資コスト、従業員の雇用コスト等の全額をカバーできるものではない、ということを念頭に置いておきましょう。

補助金・助成金はあくまで「手段」と考える

補助金・助成金の魅力はなんといっても返還が不要であることです。

しかし、補助金・助成金の要件を前提に設備導入等の時期や予算、仕様などを不本意に変更することになってしまっては本末転倒です。

事業計画にあったものを取捨選択する、もしくは事業計画を修正する際の検討材料のひとつとして活用しましょう。

※このページの執筆者

元ハローワーク正職員の社会保険労務士。ハローワーク時代に社会保険労務士試験に合格し、その後社会保険労務士事務所、企業人事部勤務を経て独立。官・民・士業の三視点からのアドバイスを得意とする。独立後は顧問社会保険労務士業務のほかWebメディア記事を通じた情報発信などを行っている。