開業直後に銀行口座の開設が必要な理由、対策や注意点など詳しく解説
開業直後には事業を軌道に乗せるため、やるべきことは多々ありますが、その中でも重要なことがあります。
それが銀行口座の開設です。
銀行口座の開設は事業者として行うべき重要事項の一つであり、避けることはできません。
口座のあるなしでその後の事業展開の中身も大きく変わってきます。
本記事においては、銀行口座の開設が必要な理由、開設を断られる原因及び対策、開設時の注意点など詳しく解説します。
開業直後でも銀行口座の開設が必要な理由
開業直後でも銀行口座を開設しておけば事業者として様々なメリットがあります。
以下の4つが口座開設による主なメリットです。
早期にメリットを得るためにも、開業直後から積極的に口座開設にチャレンジしましょう。
取引先に対する信用度が上がる
銀行口座を開設して取引先や新規先に提示することで事業者としての信用度が上がります。
事業者名義の口座を開設しておくだけでも、金融機関から信任された証拠となり対外的信用度はかなり高くなります。
特に法人としてスタートした場合、法人名義の口座を開設しておくことは必須の事項で、法人口座を保有しているだけで様々な取引をスムーズに進められます。
<h3>取引を口座の履歴として残すことで資金管理が容易になる</h3>
法人口座または事業者用口座を開設し、事業で発生した取引を口座の履歴に残すことで資金管理が簡単にできるようになります。
これは日々の会計・経理管理だけでなく、税務申告や会計監査の際にも有利です。
事業に係るお金の流れを銀行口座に集約しておけば、資金繰りの判断や経費削減の判断基準として、あるいは財務状況の把握を通じて事業の健全性を判断するときにも使えます。
事業に係るクレジットカードの利用ができる
事業用口座を開設しておくとクレジットカードが使用できます。
事業用クレジットカードを持つことで、経費の支払時に現金を用意する必要もなく、決裁後は口座引落しを通じて支払履歴が口座に残るため、後に確認するのに便利です。
特に法人口座にクレジットカードをリンクさせておくと、経営者だけでなく経営幹部にもクレジットカードを複数枚発行でき、各人の経費支払が同一口座から引き落とされるので会計処理に費やす時間を節約できます。
クレジットカードの利用で経費支払の透明性が上がることから、対外的、特に金融機関に対する信用度が増します。
将来的に口座開設した金融機関から融資が受けられる
金融機関は事業者の信用性や返済能力などにより融資をするかどうか判断します。
その際、自行に口座のない新規申込先よりも、すでに自行で口座開設して利用中の取引先からの申込みを優先して融資の判断をすることが多いです。
なぜなら申込みに際し、金融機関は口座の動きが分かるので、いち早く融資の判断に役立つ情報が得られるからです。
口座の動きに何も問題なくスムーズに取引が行われているようなら、申込先に対する信頼性も高まり金融機関から融資が受けられる可能性も上がります。
開業直後の銀行口座の開設が難しい理由と対策
最近は金融機関での口座開設が難しくなっており、誰でも申込みすれば簡単に開設してくれるわけではありません。
その理由として、銀行口座に係る不正・犯罪の防止や金融機関による顧客の選別も挙げられますが、何より事業者側の要因が口座開設を難しくしている理由となっています。
本章では代表的な要因を4つ上げるとともに対策を解説します。
金融機関が事業の実態が分からない
金融機関が事業の実態が分からないと口座開設が難しくなります。
開業直後の場合、事業実績も十分でなくなおさらです。
事業をしている実績を示すことができれば一気に信頼性が増すので、申込者としては取引先との契約書や請求書、あるいは事業を紹介しているWEBサイト等を金融機関に示して信用を得るよう努力しましょう。
特に開業直後は事業の実績も少ない時期であり、様々な手法を通じてアピールが必要です。
個人事業主・法人経営者の信用度が低い
経営者の個人としての人物像が金融機関にうまく伝わらないことも口座開設を難しくしている理由です。
対策として、口座開設の補足資料に経営者の職務履歴書を提出し、仕事の経験や能力を示すとともに、面接で誠実な人柄をアピールすることで経営者としての印象を良くして口座開設につなげることができます。
ただし、経営者が過去に債務不履行等の金融事故を起こしていたり反社会勢力と関係を持っていたりしたら口座開設はかなり厳しいということは理解しておきましょう。
資本金が少ない、あっても見せ金を疑われる
資本金が少ないケースも口座開設を難しくする要因です。
資本金が少ないと業況次第ですぐに債務超過に陥るリスクがあり、健全経営が期待できないので口座開設には不適格と判断されます。
対策としては、資本金を増やすか、ネット銀行など資本金の額を重視しない金融機関に申込みをする方法があります。
他のケースとして、資本金が一定額あっても見せ金を疑われた場合など、口座開設が難しくなります。
見せ金とは、会社設立時に資本金を実際より多く見せかけるよう仮装する行為で、たとえば市中金融から短期的にお金を借りて資本金の一部に充当して会社を設立、設立後に即日その資金を払い出し借入金に返済する行為をいいます。
もちろんこれは違法であり、審査中、金融機関に見せ金を気づかれたら信用を失い口座開設もできなくなります。
登記している住所で事業を行っていない
会社を登記している住所で事業を行っていないと口座開設が難しくなります。
登記情報の住所と、口座開設の申込書に記載された住所、もしくは実際に事業を行っている場所が一致していないと、金融機関としても本当に事業しているか疑いを持ち、さらに事前申告がなければ悪意を感じて口座開設を拒否する可能性があります。
登記の住所以外で事業を行っている場合は、申込時、金融機関に対してその理由を明確に説明しておきましょう。
また開業に当り、レンタルオフィス(バーチャルオフィス)を利用しているケースも要注意です。
口座開設では、事業者の住所確認も重要な審査項目なので、金融機関によってはレンタルオフィスの利用を「住所不定」と判断して開設不可の対応を取る先もあります。
金融機関に申込みまたは相談の段階で、レンタルオフィス(バーチャルオフィス)の利用が問題ないか、十分確認しておきましょう。
開業直後の口座開設で注意したい点
金融機関の口座開設、特に開業直後の開設において注意したい点を5つ説明します。
個人事業主の場合、口座は個人と事業用を分けておくべき?
個人事業主が口座開設をする場合、口座は個人用と事業用に明確に分けて開設して管理しましょう。
個人事業主が事業と個人の収支を同一口座で使用していると、日々の出入ればかりでなく、確定申告や税務調査等の際にお金の流れが分からなくなって混乱する原因になります。
もちろん確定申告の帳簿作成でも選り分けで余計な作業が増えて手間と時間がかかります。
口座開設の段階から口座を個人用と事業用に分けて開設及び管理しておけば、このような混乱は避けられるのでおすすめです。
個人事業主が口座開設するとき、口座名に屋号を付けるべき?
個人事業主が口座開設をするとき、できれば口座名に屋号を付けることをおすすめします。
屋号とは、「○○商店」「○○工房」「○○サービス」など、業種や商売を連想できるネーミングのことです。屋号を本人の氏名の頭に付けて口座開設することで様々なメリットがあります。
口座名に屋号付きを選択すれば、普段の取引で顧客や取引先から事業者として信頼を得やすくなるだけでなく、個人名義口座との区別がつきやすくなって、取引での口座間違いなどのリスクも減らせます。
ただし金融機関によっては屋号付き口座の開設を渋る先もあるので、申込先が屋号付き口座開設に対応しているかどうか、事前に確認しておきましょう。
最初の口座開設で依頼に行く金融機関は?
開業直後の事業者が最初の口座開設で依頼に行く場合、どの金融機関を選ぶかも重要な事項です。
大きく分けて口座開設に対応している金融機関は以下の通りです。
- メガバンク
- 地方銀行
- 信用金庫・信用組合
- ネット銀行
- ゆうちょ銀行
- JAバンク
それぞれ金融機関としての種類や特徴を持っており、口座開設に対しても難易度に差があります。
総じてメガバンクから下位の金融機関になるにつれて口座開設は容易になる傾向があります。しかし、たとえば信用金庫でも地方銀行より事業規模が大きい場合もあり一概にはいえません。
また同じ地方銀行でも口座開設の難易度には差があります。
口座開設をめざす事業者としては、事前に同業者や取引先等から金融機関の情報を十分収集して、口座開設に前向きに応じてくれる評判の金融機関を選んで申込みに行きましょう。
法人の場合、個人事業主の事業経験は口座開設に有利?
直近まで個人事業主として事業実績があり、法人成りして間もない会社が金融機関に口座開設を依頼した場合、個人事業主時の経験は口座開設に有利に働くでしょうか?
結論からいえば間違いなく有利です。
近年は資本金がなくてもすぐに法人としてスタートできるので、事業実績がないまま口座開設に臨む経営者もいます。
しかし事業実績に乏しい法人に対して金融機関は口座開設に慎重です。
それに比べると個人事業主としての事業実績があって法人成り直後の会社なら、金融機関も事業の安定性や収益性を判断しやすいので口座開設にも前向きに対応してくれます。
金融機関によって口座開設に要する時間に差があるので注意
申込みする金融機関によって口座開設に要する時間に差がありますので、口座開設を急ぐ事業者は要注意です。
口座開設に係る審査期間は概ね申込みから1~2週間掛かります。
依頼する金融機関や申込時期、申込書類の不備等によってさらに長くなる可能性もあります。
開業直後の事業者の場合、口座開設を拒否されるリスクも高くなるので、別の金融機関で申込みする可能性も含め、計画的な準備やスケジュールの余裕が必要です。
銀行口座の開設に必要な書類
最後に銀行口座の開設に必要な書類について、法人及び個人事業主別に記載します。
法人の場合
- 会社の商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 会社の定款
- 法人印
- 会社の印鑑証明書
- 代表者の実印
- 代表者の印鑑証明書
- 代表者の身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証等)
- 会社の事業実態が分かる各種資料
個人事業主の場合
- 本人確認書類
- 個人の印鑑
- 個人事業を確認できる書類(開業届、確定申告書控え等)
- 屋号の確認書類(国税・地方税領収書、公共料金領収書、事務所の賃貸契約書等)
まとめ
開業直後の事業者に対して銀行口座の開設が必要な理由やメリットを中心に詳しく解説しました。
融資と同様、事業者に対する口座開設では金融機関の審査があります。
近年は以前にも増して金融機関も取引先として事業者の選別化を進めているため、取引の入り口となる口座開設もさらに厳しさが増しています。
そのため、口座開設を希望する事業者としても、金融機関の側の目線をしっかり把握して、自分本位とならない口座開設をめざす必要があります。