法人で納税が発生するタイミングとは?納付時期ごとに税金の種類を解説
法人が納付するべき税金は多岐にわたり、税金によって納付時期が異なります。納付漏れを起こさないようにするためには、法人に納付義務がある税金とそれぞれの税金の納付時期について把握しておくことが必要です。
今回は法人に納付義務がある税金について、納付時期ごとに解説します。
事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に納付するもの
事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に納付が必要なのは、決算によって税額が確定する税金です。該当する税金として以下の2種類が挙げられます。
- 法人税等
- 消費税
それぞれ詳しく解説します。
法人税等
法人税等とは法人税および法人税との関係が深い税金の総称です。具体的には以下の税金が法人税等に該当します。
- 法人税
- 地方法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
法人税および地方法人税は国税です。法人税は法人の所得に、地方法人税は法人税に一定の税率を乗じた額が納付税額となります。法人税と地方法人税は税金の種類は別ですが、申告および納付は一緒に行います。
法人住民税と法人事業税は地方税です。事業所の所在する自治体に納付します。申告および納付は同時に行いますが、税金の性質や計算方法はそれぞれ大きく異なります。
法人住民税は以下2つの要素から構成されています。
- 法人税割
法人税額を課税対象とする部分です。法人税額に一定税率を乗じて計算します。 - 均等割
資本金等の額および従業員数によって納付税額が決まる部分です。
法人事業税は以下の要素から構成されています。
- 所得割
所得を課税標準とする部分です。資本金等の額に関係なく、所得が発生した法人すべてに納付義務が生じます。
- 収入割
電気供給会社や保険会社など、所得を課税対象とするのは不適当とされる法人では、所得額ではなく収入を課税標準として計算します。 - 資本割
資本金等の額を課税標準とする部分です。資本金1億円超の普通法人にのみ納付義務があります。 - 付加価値割
付加価値額を課税標準とする部分です。資本割と同様に資本金1億円超の普通法人のみ納付義務が生じます。
法人税は所得額、地方法人税は法人税額を課税対象とします。赤字の場合は法人税の課税対象が存在しないため、法人税額も発生しません。そのため、法人税を課税対象とする地方法人税も免除となります。
一方、法人住民税と法人事業税は複数の要素から構成されており、それぞれ課税対象が異なります。法人住民税の法人税割と法人事業税の所得割は、赤字の場合は発生しませんが、それ以外の要素は赤字でも納付義務があるためご注意ください。
法人税等の申告および納付期限は事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。定款の中で「定時株主総会の開催を事業年度終了後3ヶ月以内に行う」旨を定めている場合、申告期限を1ヶ月延長できます。
ただし延長できるのは申告期限のみであり、納付期限の延長はできません。申告期限を延長する場合は、期日までに法人税等の見込納付を行い、税額が確定してから差額分の納付または還付を受けるのが一般的です。
消費税
消費税は日本国内における商品の販売やサービス提供等の取引に広く課される税金です。消費税の計算方法は2種類存在します。
- 原則課税
「納付税額=売上に係る消費税額-仕入に係る消費税額」で計算する方法です。特に手続きをしなければ、自動的に原則課税が適用されます。
- 簡易課税
売上に係る消費税額にみなし仕入率(業種ごとに定められた一定の税率)を乗じた額を仕入れに係る消費税とみなす方法です。
「納付税額=売上に係る消費税額-売上に係る消費税額×みなし仕入率」で計算します。
一定の要件を満たす法人のみ選択できます。
消費税は前項で紹介した法人税等と違い、申告期限の延長ができません。申告期限・納付期限ともに、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内となります。
毎年特定のタイミングで納付するもの
事業年度(会計期間)を問わず、毎年特定のタイミングに納付義務が生じる税金は以下の2つです。
- 固定資産税
- 自動車税
それぞれ詳しく解説します。
固定資産税
固定資産税は、土地や家屋等の不動産や償却資産に課される税金です。毎年1月1日時点で保有している固定資産をもとに税額が決定されます。
固定資産税は自治体から送付される納付書を用いて支払います。納付期限は自治体によって多少の違いがありますが、大まかな目安は以下の通りです。
- 第1期:5月頭~6月末
- 第2期:7月末 ※東京23区は9月末
- 第3期:9月末、12月末、1月頭等
- 第4期:12月末、2月末等
なお償却資産は登記が義務付けられておらず、自治体が資産の所有状況を確認するのが困難です。そのため毎年1月1日時点で保有している償却資産について自治体への申告が義務付けられています。償却資産申告の期限は1月末日となります。
自動車税
自動車税は保有している自動車に課される税金です。法人名義の自動車を保有している場合は自動車税の納付義務が生じます。
自動車税の納付期限は自治体によって多少の違いがあるものの、原則として毎年5月31日です。自治体から送付される納税通知書を用いて1年分をまとめて納付します。
原則として毎月納付するもの
原則として毎月納付する必要がある税金は以下の2つです。
- 源泉所得税
- 特別徴収した住民税
それぞれ詳しく解説します。
源泉所得税
源泉所得税とは、源泉徴収によって天引きした所得税のことです。従業員への給与や一定の要件を満たす外注費からは、所定の方法で計算した所得税を天引きする必要があります。給与・報酬等から所得税を天引きし、給与や報酬の支払いを受ける者の代わりに納付することを源泉徴収といいます。
源泉所得税は、原則として源泉徴収した月の翌月10日までに納付が必要です。ただし給与を支給する従業員が常時10人未満の場合、源泉所得税を年2回にまとめて納付できる特例の適用を受けられます。この制度を納期の特例といいます。
納期の特例の適用を受けるには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出が必要です。納期の特例を適用した場合、1月から6月に徴収した分は7月10日、7月から12月に徴収した分は翌年1月20日が納付期限となります。
特別徴収した住民税
住民税の特別徴収とは、給与や役員報酬から住民税を天引きし、従業員等に代わって納付することです。
特別徴収した住民税の納付期限は、原則として天引きした月の翌月10日です。ただし前項で紹介した源泉所得税と同様に、常時使用する従業員が10人未満の場合は納期の特例の適用を受けられます。
納期の特例を適用した場合の納付期限は以下の通りです。
- 6月分から11月分:12月10日
- 12月分から翌年5月分:6月10日
ただし納期限は自治体によって異なる可能性があるため、必ず自治体ごとの案内を確認してください。
必要に応じて都度納付するもの
必要に応じて都度納付が必要な税金のうち、法人での発生頻度が高い税金として以下の2つが挙げられます。
- 登録免許税
- 印紙税
それぞれ詳しく解説します。
登録免許税
登録免許税とは、登記や登録、許認可等の手続きで納付が必要な税金です。法人で登録免許税の納付義務が生じる場面の例として、本店や支店の移転登記や役員変更登記、不動産登記等が挙げられます。
利用できる納付方法や納付期限は登記等の種類によって異なるため、手続きごとに案内を確認してください。
印紙税
印紙税とは、印紙税法別表第1表に掲げる文書を作成した時に課される税金です。法人で印紙税の納付義務が生じる主な場面として、契約書や領収書の作成時が挙げられます。
印紙税は対象の文書に税額分の収入印紙を貼付することで納税したとみなされます。税額は文書の種類および取引金額ごとに定められているため、文書を作成する前に必ず確認しましょう。
まとめ
法人に納付義務がある税金には様々な種類があり、税金によって納付時期が異なります。したがって、納付の必要がある税金およびそれぞれの納付期限について事前に確認が必要です。
ただし、納付期限について入念に確認したつもりでも、税金の専門家でない以上はどうしても納付漏れや認識の相違等が起こるリスクがあります。税金の納付漏れを確実に防ぐには、専門家である税理士のサポートを受けるのが安心でしょう。