2024年7月8日 投稿者: 2of オフ

法人税だけではない!法人化するなら知っておきたい法人が納めるべき税金とは?

「法人が納めるべき税金」と聞くと、法人税を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

法人税は、所得が発生したすべての法人に納付義務があり、法人にとって負担インパクトの大きい税金です。しかし法人が納付するべき税金は法人税だけではありません。

知らずに会社運営をしていると、納税の時期になってキャッシュが足りないという事態にもなりかねません。

そののようなことにならないためにも、今回は法人が納めるべき税金について詳しく解説します。

法人が納めるべき税金の例

今回はすべての法人に納付義務がある税金や、納付義務が生じる可能性が高い税金10種類に絞って解説します。今回紹介した以外の税金の納付義務が生じるケースも有り得るため、自社に課される税金を正しく把握するには専門家である税理士に相談するのが安心です。

法人税

法人税は法人の所得に対して課される国税です。普通法人に適用される法人税の税率は、資本金額の大きさや所得額によって以下のように異なります。

区分税率
資本金1億円以下の普通法人等所得年800万円以下の部分下記以外の法人15%
適用除外事業者19%
年800万円超の部分23.2%
上記以外の普通法人23.2%

出典:国税庁公式サイト「No.5759 法人税の税率」

※令和4年4月1日以降の税率です。

一般的な中小法人であれば、所得(売上ではなく、売上から経費などの各種費用を差し引いた金額)のうち年800万円以下の部分は15%、年800万円超の部分は23.2%が適用されると考えて問題ありません。

法人税の申告および納付期限は、各事業年度の終了日(決算日)の翌日から2ヶ月以内です。ただし定款で「定時株主総会の開催を事業年度終了後3ヶ月以内に行う」旨を定めている場合は、決算日までに所定の手続きを行うことで申告期限を1ヶ月延長できます。このように申告期限の延長はできますが、納付期限の延長はできないため、納付期限までに見込納付を行い、確定申告書の完成後に差額の納付または還付を受けて調整するるのが一般的です。

なお、詳細は割愛しますが、法人でいう「所得」とは法人税法上の儲け利益を指す用語で、企業会計における利益の計算方法とは少し異なります。そのため、企業会計上の利益と法人税法上の所得が一致しないケースもありみられます。

地方法人税

地方法人税とは地域間の税源の偏りを是正する目的で導入されている税金です。名称に「地方」と入っていますが国税に該当します。

地方法人税の課税対象は基準法人税額、すなわち法人税に一定税率を乗じた額が地方法人税の納付額になります。地方法人税の税率は10.3%です。

地方法人税の申告および納付は、前項で紹介した法人税とあわせて行います。

法人住民税

法人住民税は事務所の所在する自治体に納付する地方税です。都道府県および市町村それぞれに対して申告・納付をする必要があります。

※例外として事務所が東京23区にある場合は、都税事務所への申告および納付のみとなり、ます。区への申告等は不要です。

法人住民税は以下の2つから構成されています。

  • 法人税割
    法人税額を基準とする税金です。所得が多く法人税の納付額が高い法人ほど法人税割も高くなります。
  • 均等割
    資本金等や従業員数ごとに納付額が定められている部分です。

申告および納付期限は法人税と同様に、各事業年度の終了日の翌日から2ヶ月以内です。

法人事業税

法人事業税とは法人が行う事業に対して課される税金です。法人が事業活動を行うにあたって様々な行政サービスを受けているため、行政サービスに必要な経費の一部を法人が負担するべきという考えに基づきます。

法人事業税は以下の4つから構成されています。

  • 所得割
    所得を課税標準(税額を計算するときに税率をかける金額)とする部分です。所得が発生した全ての法人に納付義務があります。
  • 資本割
    資本金等の額を課税標準とする部分です。資本金1億円超の普通法人に課されます。
  • 付加価値割
    付加価値(従業員への給与や利子等と1年間の損益の合計額)を課税標準とする部分です。資本割と同様に、資本金1億円超の普通法人に課されます。
  • 収入割
    電気供給会社や保険会社など、一部の法人は所得ではなく収入を課税標準として計算する仕組みです。

中小企業は原則として所得割もしくは収入割のみ適用されます。税率は以下の通りです。

  • 年400万円以下の部分:3.5%
  • 年400万円超~年800万円以下の部分:5.3%
  • 年800万円超の部分:7.0%

申告・納付期限は各事業年度の終了日の翌日から2ヶ月以内です。前項で紹介した法人住民税とあわせて申告および納付を行います。

消費税

消費税は日本国内の商品・製品の販売やサービス提供等の取引に課される税金です。法人税等と同様に、各事業年度の終了日の翌日から2ヶ月以内に申告および納付をする必要があります。

消費税の計算方法は以下の2種類があります。

  • 原則課税

名前の通り原則的な計算方法です。特に手続きをしなければ自動的に原則課税が適用されます。

「納付税額=売上に係る消費税額-仕入に係る消費税額」で計算します。

  • 簡易課税
    売上に係る消費税額にみなし仕入率を乗じた額を仕入控除税額とする方法です。

「納付税額=売上に係る消費税額-売上に係る消費税額×みなし仕入率」となります。
※みなし仕入率:業種ごとに定められた一定の割合

簡易課税を選択できるのは以下の要件を満たす事業者のみです。

  • 基準期間(前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下である
  • 簡易課税制度を適用しようとする事業年度の開始の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している

<h3>固定資産税</h3>

固定資産税とは不動産や償却資産等に課される税金です。固定資産税のうち、償却資産に対する税金は通称「償却資産税」と呼ばれています。

固定資産税はその年の1月1日時点で所有している固定資産等の評価額を基に計算されます。土地や家屋などの不動産は自治体側が現地調査等を行い、固定資産税評価額および税額を計算する仕組みです。一方で償却資産は、1月1日時点で所有している資産の内容に関して、1月31日までに事務所の所在する都道府県税事務所へ申告が必要です。

固定資産税は毎年6月頃に自治体から届く納付書を用いて納付します。基本的には年4回にわたって分割納付する仕組みであり、自治体によって期日に多少の違いがあります。

自動車税

自動車税は保有している自動車に対して課される税金です。法人名義の自動車を保有している場合は自動車税の納付義務も生じます。

自動車税は毎年5月上旬に届く通知書に記載された額を納付する仕組みです。税額は購入時期や排気量によって異なります。

登録免許税

登録免許税は、登記や許認可等の手続きに際して課される税金です。法人が登録免許税を支払う場面の例として、各種商業登記や不動産登記等が挙げられます。

登録免許税は登記や登録等の種類によって、選べる納付方法や納付期限が異なります。税額も手続きの種類によって異なるためそれぞれ確認が必要です。

以上は、税を実際に納める人と負担する人が同じでした。このような税金を直接税といいます。これに対して、税を実際に納める人と負担する人が異なるものを「間接税」といいます。ここからは、間接税である消費税、源泉徴収税、特別徴収の住民税を紹介します。それぞれ、法人が消費者や取引先、従業員が負担する税金を「預かっておいて」それらの者の代わりに納めるのです。

消費税

消費税は日本国内の商品・製品の販売やサービス提供等の取引に課される税金です。法人税等と同様に、各事業年度の終了日の翌日から2ヶ月以内に申告および納付をする必要があります。

消費税の計算方法は以下の2種類があります。

  • 原則課税

名前の通り原則的な計算方法です。特に手続きをしなければ自動的に原則課税が適用されます。

「納付税額=売上に係る消費税額-仕入に係る消費税額」で計算します。つまり、日々の取引の中で自社が受け取った消費税から自社が支払った消費税を差し引いた額を納付する必要があります。

  • 簡易課税
    売上に係る消費税額にみなし仕入率を乗じた額を仕入控除税額とする方法です。簡易課税は、中小事業者の税務事務負担に配慮する目的で認められた簡易的な計算方式です。

「納付税額=売上に係る消費税額-売上に係る消費税額×みなし仕入率」となります。
※みなし仕入率:業種ごとに定められた一定の割合

簡易課税は、中小事業者の税務事務負担に配慮する目的で認められた簡易的な計算方式です。

そのため、簡易課税を選択できるのは以下の要件を満たす事業者のみです。

  • 基準期間(前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下である
  • 簡易課税制度を適用しようとする事業年度の開始の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出している

源泉徴収税(源泉所得税)

源泉徴収税(源泉所得税)とは給与や報酬から天引きした所得税のことです。

従業員を雇用し給与を支払っている事業者や、一定の要件を満たす報酬を支払う事業者には、支払額から所得税等を差し引くことが義務付けられています。給与や報酬等から所得税額を徴収し納税者に代わって納付することを源泉徴収といいます。

源泉徴収税は原則として、源泉徴収をした月の翌月10日が納付期限です。ただし給与の支給人員が常時10人未満の事業者の場合、所定の手続きを行うことで源泉徴収した所得税の納付を年2回にまとめて行えます。このような仕組みを「源泉所得税の納期の特例」といいます。

特別徴収の住民税

特別徴収とは従業員の給与から住民税を天引きし、従業員に代わって自治体へ納付する制度です。給与支払者である事業者には特別徴収を行う必要があります。

特別徴収した住民税の納付期日は、住民税を徴収した月の翌月10日です。ただし前項で紹介した源泉徴収税と同様に、特別徴収対象となる従業員が常時10人未満の場合は所定の手続きを行うことで納期の特例を受けられます。

まとめ

法人が納付するべき税金は多岐にわたり、それぞれ申告・納付期限や税金の計算方法が異なります。納税漏れや計算ミス等を起こさないためにもは、法人が納付するべき税金についての正しい理解が必要です。

適切な納税を行えるよう、今回紹介した内容をしっかり押さえましょう。

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