2024年5月10日 投稿者: 2of オフ

採用歴40年超  職務経歴書のプロが教える効果的な書き方とは?

 この記事は筆者が長年にわたって採用の仕事に従事した経験から、職務経歴書の効果的な書き方について解説するものです。これから職務経歴書を作成しようとする読者の一助になれば幸いです。

1. 職務経歴書の基本的な書き方と要点

(1) 転職希望者が知るべき書き方の基本 

① 読み手が「読みやすいこと」

 転職希望者はひとつ以上の職業経験があります。自分の過去のことになると「あれも」「これも」書きたくなり、複雑で独りよがりな内容に陥りがちです。しかし、職務経歴書は採用先に「読んでもらうこと」が最初の目標ですから、読み手が読みやすい組み立てにすることがまず大切です。

② 自分のキャリアを「適切にアピールすること」

 転職に限らず、就職の成否は自分を売り込む営業だといって過言ではありません。ウソは絶対にご法度ですが、自分のキャリアを「適切にアピールすること」は、職務経歴書を記載するうえでの基本です。

 「適切にアピールすること」とは、「適度にお化粧すること」と言い換えても良いでしょう。ただし、読み手に不快感なく好印象を与えることが必要です。

(2) 職務経歴書に必須の項目とその詳細

 職務経歴書の書き方や必要項目には、決まりがあるわけではありません。採用先の指定様式がある場合は、それに従う必要がありますが、原則として応募者が自由に作成して構いません。

 ただし、採用先からみると、次の項目はぜひ記載してほしいものです。 

 ①  所属した企業・団体等の正式名称

 ② その本店所在地(市区町村が分かればよい)

 ③  その主な事業内容(家庭用品製造販売業、食品小売業等、簡単でよい)

 ④  在籍していた期間

 ⑤  担当した職務内容とその期間

 ⑥ 役職に就いていた場合その名称と期間

 ⑦ 中堅以上の転職希望者にあっては、職務実績や成果の内容

2.  経歴を際立たせる実績の記載方法

   自分のキャリアをどのようにアピールしたらよいのか、ここでは過去の実績や成果を職務経歴書に反映させるためのポイントを解説します。

(1) 具体的な実績と成果の書き方

 ①  一つの実績や成果をあげるためには、その前段階で、あるいはその陰で、幾つもの仕込みや雑用をこなしたはずです。

②  職務経歴書でよく見かける事例に、「○○の実績をだした」「成果は△△だった」というだけの記載が ありますが、これでは読み手の心に響きません。

③  採用先にとって結果は重要な情報ですが、さらに知りたいことは、そこに至るまでのプロセスで応募者がどんな工夫や努力をしたかです。

④ したがって、実績や成果を出すまでの主な職務内容をすべて記載し、「これらを確実に履行することで、○○の実績、△△の成果を出すことができた」とすると非常に輝いた結果を印象付けることができます。

(2)  スキルと職務能力を強調するテクニック

① 自分のスキル(技能)が、職務にどれだけ貢献したかをアピールすることも大事なポイントです

②なぜならスキルは目に見えず、いくら言葉で強調しても採用先には説得力がないからです。

③ そこで持ち出したいのが履歴書(履歴書の書き方はこちらの記事で解説しています。)に記載した資格や特技、そして趣味などです。

④ 例えば、「その資格とは直接関係はないが、その資格に関連するこの知識のおかげでその職務が円滑に遂行できた」と記載すると、応募者のスキルが可視化されてきます。

この方法は、特技や趣味などでも応用することができるはずです。

(3)  定量的なデータを用いた効果的な表現

① 実績や成果を数字でアピールすることは、何よりも説得力が増すので多用することを勧めます。

② 営業関係職なら、対予算比○○%達成、とか対前年比○○%増額といった記載が適切でしょう。

 

③ 実績や成果を定量的に把握することが難しいと思われる職種においても、数字で表現できる事例は次のように多くあります。ぜひ参考にしてください。

・業務を○○のように効率化した結果、部門の残業時間を前年比○○%削減させた。

・人員配置を○○のように見直した結果、人件費を前年比○○万円低下させた。

・電話オペレーターの再教育を実施し、お客様の再クレームを前年比○○%低下させた。

・製造ラインに○○の工夫をし、不良率を前月比○○%低下させた。

・休憩時間中の事業所一斉消灯を継続実施させ、電気代を前年比○%低下させた。

3.  テンプレート例と職務経歴書の作成

 1でも解説したとおり、職務経歴書の書き方に決めごとは何もありません。そこでこの項では筆者が近年好感をもった職務経歴書の実例を紹介します。視点のポイントは、やはり「読みやすいこと」と「適切にアピールすること」です。

(1) ペルソナ(1) 若手向 ・・・(テンプレートはこちら)

① この職務経歴書(若手向)テンプレートは転職回数が少なく、従って成果や実績はまだ乏しい若手向けのものです。

② 学校卒業後数社経験していますが、特筆すべき成果や実績はありません。そこで経験してきた職務(実務)を詳細に列挙し、何(スキル)ができるかよく分かるようなフォーマットになっています 

(2) ペルソナ(2) 中堅以上向 ・・・(テンプレートはこちら)

   ①  この職務経歴書(中堅以上向)テンプレートは転職回数がやや多いベテラン向けのものです。

  ② 5社ほど転職し、それらで経験した職務(実務)・役職・部下数などは職務経歴書(1)にまとめ、職務経歴書(2)には経験した5社横断的に職務ごとの実績や成果を記載する方式です。

③ 実務経験と実績・成果を別に整理し組み立てることで、応募者のキャリアが立体的に把握できるよう工夫がされています。

4.  書類選考を通過するための職務経歴書のチェックポイント

(1)  応募する業界や職種ごとの改善ポイント

①その業界やその職種にフィットする職務経歴書を書くのは、たいへん難しいことです。それは職務経歴書が応募者の足跡であり、変えたり消したりすることができないからです。

②しかし、例えば保険業界にいた応募者が自動車業界を希望した場合、保険と自動車は密接な関係にあります。そこで自分の職務を振り返ると、きっと自動車業界との接点が見つかるはずで、これを職務経歴書のストリーに加えることは大きな改善になります。

③また、技術職だった応募者が畑違いの営業職を希望した場合、技術職時代に営業職に同行するセールスエンジニアの経験があれば、これも職務経歴書上で大きな加点になりえます。

④ ビジネスは業界や職種を超えてどこかで、何かと必ず接点や結びつきがあります。自分のこれまでの仕事の棚卸を十分行い、応募する業界や職種に少しでも近づく職務経歴書を作成することが得策です。

(2) 採用先(読み手・面接官)が重視する職務経歴書の要素

 採用先は職務経歴書を読みながら次の事項を重視し、面接に進むかどうか判断しています。視点はシンプルに2つだけです。

① 職務経歴書が、募集要項等で求めるキャリア(経験・能力・スキル・実績・学歴・人柄・年齢)に合致しているか?

②  仮に合致していない要素があっても、入社後にこれをフォローアップし改善させるポテンシャルがあるか?

(3)  書類通過率を高める職務経歴書の仕上げ方

    せっかく職務経歴書が提出されても、些細なことで書類選考から漏れてしまうことがよくあります。筆者が日頃気になっていることは次のとおりです。

  ① 誤字脱字

  ②  年月日  記載誤り

  ③  キャリアの棚卸不足と未整理 (これが最も大事なことです)

  ④ 日本語の意味が理解不能(難しく書こうとするとこうなります)

  ⑤ 履歴書の記載内容との不整合(これは致命傷になります)

5. 職歴の多い人の職務経歴書の書き方

転職回数の多い応募者の職務経歴書はハンディがあると思われがちですが、反対に、多くの経験があることをメリットとしてアピールするようにしましょう。

(1) 多岐にわたる経験を明確かつ簡潔に記載すること 

① 自分の足跡ですから、自信をもって経歴を開示してください。

②  特に会社等を退職した場合は、その事情を明確にしておくと採用先は安心します。

この時、後ろ向きの理由ではなく、例えば「その仕事も楽しかったが、○○に挑戦したかったので転職した」等の将来につながる話が歓迎されるのです。

③  職歴上に長い空白期間がよくみられます。これはそのまま放置せず、例えば、その間は「勉強していた」「遊んでいた」「単発のアルバイトをしていた」等々の事情を隠さず記載しておくとよいでしょう。そして、ここで大事なことは、この期間で何を学び、将来どうしようと考えていたかを誠実に記載することです。それにより、人柄のよくにじみ出た職務経歴書になりえます。

(2) キャリアの棚卸しのポイントと期間

① キャリアの棚卸は事細かく、徹底的に実施することが賢明です。その職務や経験などの期間の長短は関係ありません。

② なぜなら、ヒトのあらゆる行動で無意味なことなどなく、一見荒唐無稽な行動もヒトのキャリアの一部を司っているからです。

③ 特に転職回数の多い応募者こそ、数多くの経験を積んでいます。どんな些細なことでも棚卸をしていけば、この中から必ず自分の強みがいくつも見つかるはずです。

④  そして、これを職務経歴書の自己アピールの手段に使わない手はありません。

6. まとめ

 効果的な職務経歴書の記載方法について、5項目にわたって解説してきました。繰り返しになりますが、印象に残る効果的な職務経歴書作成のポイントは「読みやすいこと」と「適切にアピールすること」の二つに尽きます。

読者が本記事を参考に、効果的に職務経歴書を作成されることを祈念します。

この記事を書いた人:A.Watanabe
大学の法学部を卒業後、大手メーカー等で長く人事部に勤務する。
現在はサービス業系の企業で、人事部門はもちろん経営全般のアドバイザーを務める。
これまで見てきた履歴書や職務経歴書は、優に2万件を超える。

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