2024年5月10日 投稿者: 2of オフ

採用歴40年以上のベテランが教える!効果的な履歴書の書き方

筆者は民間企業で40有余年に渡り、採用の仕事にかかわってきました。そのため、新卒者から中途採用者そしてパート・タイマーやアルバイトに至るまで、実際の採用の現場で多くの履歴書をみてきました。本記事では筆者のそうした経験をもとに、効果的な履歴書の書き方を解説します。

結論からいうと、印象に残る効果的な履歴書を記載するためのキーワードは、「読みやすさ」と「自分らしさ」の2つです。

1. 履歴書の基本

(1) 履歴書の様式

① 履歴書の様式や記載方法に、法律や決まりごとは一切ありません。自分の好きな様式で、自由に記載して構わないのが原則です。

② ただし、採用先が指定した履歴書様式がある場合はもちろんそれに従い、そうでない場合は市販の履歴書や、厚生労働省が作成した様式を利用することが無難です。

③ なぜなら、これらの様式には採用先が応募者について「知りたいこと」の最小限の記載項目が、網羅されているからです。

④ なお、これらを少しアレンジした様式にすると、個性的でより効果的な履歴書になるのでそのことは後述します。

(2) 「学歴」「職歴」「資格」の記載方法

履歴書の必須といえる記載項目に「学歴」「職歴」「資格」があります。これら  の記載方法は意外に難しく、ここで採用先が期待する、すなわち「読みやすい」一般的な記載方法を紹介します。

①  学歴

・義務教育終了の事実(一般的には中学校卒業)を最初に記載
・その後、上位学校の入学と卒業や中退の事実を順次記載
・ 学校名は省略せず正式名とし、学科や専攻コースがあれば合わせて記載

  (例)
平成○○年 3月  東京都○○区立○○中学校  卒業
 同年   4月  東京都立○○高等学校普通科    入学
平成○○年 3月      同校                        卒業
 同年   4月   ○○大学経済学部        入学
令和○年    3月                      同校                         卒業(注)

(注) 新卒者の場合は、「卒業見込」と記載します。

     ②  職歴

・職務経歴を原則として年代順に記載
・所属した会社名、団体名等は正式名称を記載
・倒産した会社等はその旨の事実を記載
・職歴欄は所属した会社名、団体名のみ記載し、職種や役職は記載しない

  (例)  
平成○○年   4月  ○○通信工業株式会社    入社
平成○○年   8月  自己都合により       退職     
令和○年    3月  株式会社○○人材サービス     入社
令和○年    9月            同社倒産により       退職
現在に至る。(注)  

(注) 現職の場合は、「在職中」と記載します。

 ③  資格

・原則として、資格に合格あるいは取得した年代順に資格名を記載
・資格名は主催団体名等も併記し、正式名称を記載
・マイナーな資格、ユニークな資格、応募先とは関係のない資格も臆せず記載する

と書類審査に極めて有効的

(例)
平成○○年 5月     普通自動車第一種運転免許               取得
平成○○年 10月     実用英語技能検定2級             合格
平成○○年    9月     日本商工会議所簿記検定3級          合格
平成○○年    8月   東京都公安員会 駐車監視員資格者    取得
平成○○年   12月   東京消防庁 救命技能認定        修了(注)

(注) 講習受講のみの場合は、「修了」とします。

(3)  志望動機と自己PR・・・印象を左右するコツとダメな例

   履歴書を記載するうえで応募者の頭を悩ませるのが、「志望動機」や「自己PR」でしょう。同時に採用先が最も注目するのもこの欄です。ここで大事なことが、冒頭で触れた「読みやすさ」と「自分らしさ」を表現することなのです。

ところで、この欄の記載方法には「コツ」があります。ここでは良い例とダメな例をいくつか紹介しながら解説します。

  

  ①  有効な記載方法の一例(「公式」に沿って記載する)

・まず、「結論」を記載します。これは志望動機(自己PRの場合は「自分の強みは何か」)をひと言で記載します。
・次に、その「理由」を端的に説明します。
・さらに、 「具体例」を挙げて「理由」を補います。
・最後に、「まとめ」として採用後の決意や夢 (自己PRの場合は、「強みの活用方法など」)を記載します。

   

(良い例)

  志望動機
(結論)私は大学の就職部で御社の求人を知り、御社を第一志望として応募する ことにしました。(理由)御社は家庭用雑貨、特にキッチン用品の開発販売の大 手で、下宿生活の私は御社の製品の愛用者として、御社はとても身近な存在でし た。(具体例)私はゼミではマーケティング論を専攻し、サークル活動で広告研 究会に所属しています。ここで得た知識と経験を御社で活かしたいと考えたこと も御社を志望する大きな理由です。(まとめ)ご縁いただき入社のあかつきに は、一人住まいの働く女性に寄り添う製品の開発に力を尽くしたいと思います。  

 いかがでしょうか? 公式に沿って記載しているので読みやすく、読み手の心に自然に入ってきませんか。また、気負いも感じられず応募者の人柄が伝わってくる文面で、ぜひ面接でもっと話を聞きたい人材です。

② ダメな例

  あまり感心しない事例は概ね次の五つのどれかに集約されます。これは志望動機、自己PRに共通していえることです。

・「会社の研究をしていない」とすぐ分かる文面
・「過去はとにかく、御社に入ったらがんばります」というスタンスの文面
・  自分のキャリアと志望理由とが結びつかない文面
・  人柄が具体的に伝わってこない文面
・  待遇や自分の趣味の話が優先で、仕事の中身の薄い文面

2.  履歴書の書き方マスターガイド・・・応募者属性別にアドバイス

ここでは履歴書を記載するにあたって、応募者属性別にどんなことに最も留意が必要かを解説します。それぞれの立場が異なりますので、それに合わせて履歴書の記載方法を検討する必要があります。

(1) 転職者

① 転職希望者はすでに一定のキャリアがあります。採用先はこれと採用先が必要としている能力やスキルが、合致するかどうかを見極めようとします。

②  その理由は転職者に即戦力として活躍してもらいたい、と考えているからです。

③  従って、転職者はキャリアを前面にだしてアピールすることが必須です。

履歴書ばかりでなく、具体的にはこれを補完する職務経歴書を別に作成することが望ましいでしょう。

④ 転職希望者にとって自分のキャリアを採用先に上手に伝えること、それが成効のカギになります。

(2) 新卒者

① 新卒者は履歴書(あるいはエントリーシート)を記載するうえで、「学生時代に何に最も打ち込んだか」そしてそれが「志望動機にどう結びつくのか」に最大の留意を払う必要があります。

② その理由は新卒者にはキャリアはありませんが、採用先は一つのことに打ち込む情熱や集中力、勤勉性そして謙虚さといった資質が、ビジネスにとっても極めて大事だと考えているからです。

③ 具体的に学生時代に打ち込んだこととして、学業、サークル活動、アルバイト、ボランティア活動、海外留学、趣味等なんでも構いません。

 ④ なぜそれに打ち込んだのかの理由と、志望動機との結びつきを端的に記載することが効果的です。

(3) パート・タイマー、アルバイト

① パート・タイマーやアルバイトの応募だからといって、履歴書の記載がずさんで構わない、ということは決してありません。

 ② その理由は、採用先にとってパート・タイマーやアルバイトも重要な戦力の一人で、応募者の人柄や得手、不得手が採否の重要な判断要素になるからです。

③ もちろん、履歴書の具体的な内容は、転職者や新卒者ほど密度の濃いものは求められません。志望動機は「通勤に便利だから」といった簡単なものでもよいでしょう。

④ その一方で、自己PR欄に「時間に正確です」「約束が守れます」「長く勤務できます」といった働くうえで必須の基本的なマナーの記載があると、採用先はとても安心します。

 

3.  効果的な履歴書作成のためのテンプレートと見本

1で解説したとおり、履歴書の様式に決まりごとはありません。採用先から指定されない限り、応募者が市販品等をアレンジして自分らしい履歴書を作り上げることは、むしろ採用先に好感をもたれます。

ここでは、筆者が実際の業務のなかで好感をもった履歴書テンプレートの実例と、アレンジの特徴を紹介しますので参考にしてください。

 (1) 新卒者向 ・・・別紙1(テンプレートはこちら)

 新卒者らしく「本人自由記載欄(志望動機・学生時代力を入れたこと・特技・自己PR・趣味)」欄を大幅に拡大し、応募者の想いを存分に記載するのに効果的な履歴書です。

 (2) 転職回数の少ない若手向 ・・・別紙2(テンプレートはこちら)

  ① 転職回数こそまだ少ないものの職歴欄をやや拡大し、会社の合併や分割などの経緯がよく理解できるテンプレートになっています。

    ② また、「志望の動機・自己PR・得意学科・趣味」欄は要点のみ記載し、詳細は職務経歴書に譲る記載方法で、応募者のキャリアがよくわかる組み立てです。

 (3) 転職回数のやや多い中堅向 ・・・別紙3(テンプレートはこちら)

  •  転職経験が豊富なこの年代になると、履歴書でも自分らしさを強調して差別化を図ることも有効でしょう。
  •   テンプレートは履歴書の右半分を「自己紹介書」として要点をここに記載し、職務経歴書をさらに工夫し、他の応募者との差別化を図れる組み立てとなっていますから、ぜひ参考にしてみてください。

4.  履歴書提出マナー

 さて、履歴書の記載が完了したら、次の事項を十分チェックしてから提出しましょう。

(1) 履歴書のサイズは原則としてA4サイズか、A3の二つ折りサイズとすること

(2) 全体を3回は読み直し、事実の正誤訂正、誤字脱字、日付表記などをチェックのこと

(3) この時、和暦、西暦が混在して記載されていないか確認し、必ずどちらかに統一の

こと。なお、和暦、西暦を併記すると、さらに効果的になること

(4) 記載欄に「空白」があると採用先の印象を損ねるおそれがあるので、必ず記載しておくこと。必要なければ「なし」と記載しておくこと

(5)  履歴書は白封筒に入れ、汚損のないよう大切に取り扱うこと

(6) 白封筒の左端に「履歴書在中」と朱筆しておくとよい

(7)  オンラインでの提出であっても、上記の(1)~(4)は同様に扱うこと

5. まとめ

 有効的な履歴書の書き方について解説してきました。履歴書の書き方は決まりがないだけに、なかなか難しいことがお分かりいただけたと思います。

 ただし、奇をてらうことなく、「読みやすさ」と「自分らしさ」を心がけて、読み手の心に残る履歴書に挑戦してみてください。素晴らしい履歴書ができあがることを祈念しています。

この記事を書いた人:A.Watanabe
大学の法学部を卒業後、大手メーカー等で長く人事部に勤務する。
現在はサービス業系の企業で、人事部門はもちろん経営全般のアドバイザーを務める。
これまで見てきた履歴書や職務経歴書は、優に2万件を超える。

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