【建設業向け】創業計画書の記入例を紹介!融資成功につながる記入戦略とは?
創業計画書は、日本政策金融公庫で創業融資を受ける際に不可欠な文書です。
特に建設業では、売掛金の回収期間に必要な運転資金と、建設機械の準備に伴う投資が大きいため、資金の管理が極めて重要です。
そこで今回は、建設業の創業動機の記入から、経営者の略歴、取扱商品・サービスの記入など、計画書をどのように作成していくべきかについて、「文章の記入が必要な項目」を中心に解説します。さらに、建設業を成功させるために必要なポイントもお伝えしていきます。
さっそく、創業計画書の概要からみていきましょう。
建設業向け創業計画書の記入例
創業計画書を記入する際、建設業経営者の創業への動機や取扱商品・サービスをどのように記述するかは、融資審査において非常に重要です。計画書にある合計8つの項目をどのように記入するのか、具体的な例を交えて説明します。
①:創業の動機
「建設業を開業する理由」を記入する欄は、最も大切な項目といえます。ここでは、ただ熱意を示すだけでなく、ご自身がこの道を選んだ具体的な瞬間や出来事を伝えましょう。たとえば、「地域の建築文化を守りたい」という思いや、「独自の建設技術を活かしたい」といった独自の動機を詳細に説明します。
さらに、顧客に提供したい特別な建築体験や、ご自身の会社が、社会(地域コミュニティ)にどのように貢献するかを明確に描写することも大きなポイントです。建設業として建築を行うことはもちろん大切ですが、ご自身だけが持つストーリーを織り交ぜることで、読み手に「応援したい」と感じてもらえることも意識しましょう。
【具体例】
「私の故郷では、古くからの建築技術が失われつつあります。これを守るため、地元の伝統建築に特化した建設会社を立ち上げることが私の創業の動機です。私はこの地で育ち、地元の建築技術に精通しています。地元の木材を使用し、伝統的な技法での建築を提供することで、地域の文化を守るとともに、新しい世代に伝えていきたいと考えています。さらに、環境に配慮した持続可能な建築を推進することで、エコフレンドリーな社会づくりに貢献したいと思っています。私の会社は、単に建物を建てるだけでなく、地域の歴史と文化を形にする場となることを目指しています。」
②:経営者の略歴等
これまでの経験や学んだスキルは、ご自身の建設業が成功するための基盤です。ここでは、事業に関する業界での経験等を、時系列で正確に記入していきます。
【具体例】
年月 | 内容 |
---|---|
令和○年○月 | ○○大学工学部建築学科卒業 |
令和○年○月 | 株式会社○○建設 入社、現場監督担当(○年) |
令和○年○月 | ○○県の建築士資格取得 |
令和○年○月 | ○○建設株式会社にてプロジェクトリーダーとして勤務(○年) |
令和○年○月 | 地元○○県に戻り、独自の建設会社創業準備開始 |
③:取扱商品・サービス
ご自身の建設業で提供するサービスや特徴的な建築技術、顧客にどんな建築体験を提供することができるかを記入します。また、競合分析の結果から導かれる自社の戦略なども、この箇所に記していきます。
【具体例】
項目 | ポイント |
---|---|
取扱商品・サービスの内容 | ①住宅建築:地元伝統の建築技術を活かした家屋(売上シェア 40%)②商業施設建築:環境に配慮した持続可能な建築デザイン(売上シェア 30%)③リフォーム・修繕:地域の歴史を守る伝統的な建物の修繕(売上シェア 30%) |
セールスポイント | 地域の伝統技術と現代のエコテクノロジーの融合・顧客との緊密なコミュニケーションによるカスタマイズ建築・地域に根ざした建築を通じたコミュニティづくり |
販売ターゲット・販売戦略 | 地元の文化に興味を持つ家族、環境問題に敏感な若年層・ウェブサイトとSNSを活用した地域文化の発信、地元イベントへの参加 |
競合・市場など企業を取り巻く状況 | 地域に密着したサービスで差別化、大手建設会社との協業・伝統的な建築技術への関心の高まりを利用したマーケティング戦略・地域の歴史と文化を重んじる顧客層の獲得 |
④:取引先・取引関係等
この欄には、具体的な取引先の名称やシェアなどを記入していきます。建設業の成功は、信頼できる材料供給業者や協力業者がいることも重要です。材料の質から価格競争力はもちろんのこと、プロジェクトの効率的な進行に至るまで、ご自身が営む事業の品質とコストに直接影響を与えるからです。
また、競合他社と比較して、独自性のある取引条件を明らかにすることにもつながります。たとえば、地元の土木・木材業者と直接取引をしていた場合、特別な材料を安定供給することができるでしょう。
こういったメリットを、シェアや取引の割合欄から具体的な数字で明記することで、読み手は計画書から事業の特徴を把握することができます。
⑤:従業員
ここでは、建設業運営における最重要資源である人材を、数字で明確に表記します。従業員は、事業の成功において不可欠な働き手です。建設業の場合、従業員が現場での作業効率や安全を大きく左右するため、事業の基盤を形成します。
特に、近年は人口減少問題から、建設業の担い手がいないという問題もあります。
こういった大切な働き手の人数を記すことで、どのくらいの規模で建設業を運営するのか伝えることができます。もちろんこの中には、事業者であるご自身も含まれます。
⑥:お借入の状況
「お借入の状況」は、ご自身の財政状況を示すための重要な欄です。ここでは、現在の借入金額とその使用目的を明示し、年間にどれくらい返済しているかを記載します。この情報は、融資担当者がご自身の返済能力を判断するための基本的な材料となります。
たとえば、事業拡大のための借入や、個人的なローン(住宅や軽機材など)の情報も含めることで、融資担当者にご自身の全体的な財務状況を理解してもらうことができます。これにより、創業後の資金繰りが現実的かどうかを判断する上での重要な指標となります。
⑦:必要な資金と調達方法
必要な資金と調達方法では、事業開始に必要な総資金を計画し、その資金をどのように集めるかを具体的に示します。必要な資金には設備投資、運転資金、初期仕入れ費用などが含まれます。そして、それらの資金をどのように調達するかを、自己資金、親族からの援助、金融機関からの融資などをリストアップします。
この箇所で大切なのは、必要な資金の細かい内訳を明確にし、それに対する調達計画を現実的に立てることです。特に建設業はまとまった金額の初期投資や許認可が必要な事業です。計画の具体性と現実性が、融資担当者に事業への信頼感を与え、資金調達の可能性を高めます。
⑧:事業の見通し
事業の見通し(月平均)では、事業の収益性と持続可能性を示すために、詳細な財務予測を行います。ここでは、売上、原価、経費などを用いて、将来の収益を予測します。
たとえば、具体的なプロジェクト項目ごとの売上予測、材料のコスト、人件費、事務所維持費などの固定費用、そして期待される利益を示します。このプロセスには、業界のベンチマークや競合他社のデータ分析を取り入れることが重要です。
さらに、季節変動や特別イベントによる売上の変動など、外部要因が収益性に与える影響も考慮に入れます。これにより、融資担当者に対して、ご自身の事業計画が現実的であり、計画された収益が実現可能であることを納得させることができます。
以上が、創業計画書8項目の解説と、具体的な記入例でした。
ここまで説明した内容を意識することで、ご自身の建設業開業における背景や熱意がより読み手に伝わることでしょう。
ところで、建設業開業に際し、どんな戦略を持って創業計画書に取り組めばいいか気になる方もいるのではないでしょうか。ここからは、建設業を長く続けるコツと、将来への見通しについて説明します。
建設業ならではの成功戦略とは?
建設業開業における成功の鍵は、独自性と明確なターゲット市場の理解にあります。創業計画書の項目にもなっている「取扱商品・サービス」に対しては、ご自身の会社が提供するユニークな価値を明確にします。
たとえば、環境に配慮した持続可能な建築、伝統的な建築技術の継承、またはテクノロジーを活用した革新的な建築デザインなど、会社の個性を際立たせる要素を具体的に絞り出しましょう。さらに、「販売ターゲットや販売戦略」では、理想的な顧客像を描き、どのようにしてその顧客群を引き付け、維持するかなどを盛り込みます。
具体例を挙げるとすれば、エコフレンドリーな建築に関心がある若い家族、伝統的な建築を重視する地域コミュニティ、テクノロジーを活用したモダンなビルディングに興味がある企業など、具体的なターゲット市場とアプローチ方法を捻出します。
また、地元のイベントへの参加、顧客からのフィードバックを生かしたプロジェクトの改善、忠実な顧客への特別なオファーや割引など、顧客関係を築くための「強み」を深く掘り下げることも大切です。
つまり、建設業を開業し、長期的な成功を目指すにあたっては、どういった層にどのようなサービスを提供していくのかがとても重要だといえます。この視点を考え抜いた先に、質の高いサービス戦略の考案が実現し、創業計画書の内容も充実することから、読み手である融資担当者に対して強いメッセージを伝えることができるでしょう。
創業計画書の建設業向け記入例に関するまとめ
今回は、建設業開業を成功に導くための具体的ステップとして、創業計画書の解説と記入例をお伝えしました。
創業計画書は、ご自身の建設業が成功するためのロードマップです。計画書の各項目に真剣に向き合い、具体的で説得力のある内容を記述することで、資金調達の可能性を高め、安定した建設業を経営することができます。
ぜひ、本記事の内容を参考にしながら、長期的に成功できる建設業をめざし、創業計画書を作成してみてください。