会社設立のプロ行政書士が徹底解説!会社員が副業で会社設立する際に押さえておきたいポイント
副業禁止規定
まず第1に、今勤めている会社が副業を禁止しているのかいないのか?ここは極めて重要なポイントです。大きく分けて3つのケースがあります。
ケース1 完全禁止
もしあなたがお勤めの会社が副業完全禁止の場合、会社に在籍しながら副業で新たな会社を設立するのはおすすめしません。
倫理的な問題もありますし、バレないように慎重にコトを運んでも、ちょっとした言動や違和感からバレてしまうことはあります。
それでも副業をしたい場合は、まず会社の人事部門に、「労働時間外にライフワークとして、この会社と競合しない範囲で仕事をしたい」と相談をするのも一つの方法です。
人手不足の昨今の情勢では、経営者としても声高らかに「自社の業務だけに専念しろ!」とは明言しにくいのではないでしょうか。
参考までに2018年に厚生労働省が作成した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
このガイドラインでは、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由である」とされています。
ケース2 条件付き承認
「労働契約上の労働時間外」や「本業に支障がない範囲」、「本業との競合や顧客の不利益にならない範囲」など条件付きで認めている会社の場合は、必ずその範囲を逸脱しないように、副業を行いましょう。
これらの条件は、万が一紛争になった場合、裁判所としても合理的な基準であると判断する可能性が高いので、違反すると最悪の場合、解雇事由になったり、会社の利益を害した場合には、会社から訴えられる可能性もあります。
きちんと業務内容や対象顧客、副業の労働時間などについて会社と話し合ってから会社設立することをおすすめします。
ケース3 承認
副業の会社設立には何も問題はありませんが、ケース2で記載したように、在籍している会社の経営に不利益を生じさせることはあってはなりません。
何を副業にしますか
副業をするうえで一番意識すべきことは、現在勤めている会社の経営に対して競合しないか?ということです。
すでに現在の仕事を通じて事業のノウハウや人脈を持っていて、それらを新たな事業で活用したいという気持ちは分かりますが、それによって本業と競合したり、副業で顧客に迷惑をかけてしまい本業の方でも信用を失ってしまうなんてことがあってはなりません。
本業と近い業態で副業に取り組む場合は、競合や顧客対応について配慮が必要です。
どれくらいの所得を目指しますか
副業の内容を決めたら、次に事業計画を立てましょう。まずは簡単なもので結構です。
何ヶ月後に月間どれくらいの売り上げがあって、事業経費がどれくらいかかって、結果として年間どれくらいの所得になるのか。
ざっくりと売上ー経費が所得になりますので、現実的な目標値を決めてください。
実はこの「所得」によって納税額に違いがあります。
実際に国に納める税金の税率を見ていきましょう。
所得税率(復興特別所得税含まず)
※所得額に税率を乗じ、そこから控除額を減じた額が納税額となります。
所得額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
330万円以下 10% 97,500円
695万円以下 20% 427,500円
900万円以下 23% 636,000円
1800万円以下 33% 1,536,000円
4000万円以下 40% 2,796,000円
4000万円超 45% 4,796,000円
法人税率(中小法人:資本金1億円以下)
所得額 税率
800万円以下の部分 15%
800万円超の部分 23.2%
所得を2000万円としてこの税率表から国に納める税額を計算すると、、、
【個人】
20,000,000円 × 40% – 2,796,000円 = 5,204,000円
【法人】
8,000,000円 × 15% + (20,000,000円 – 8,000,000円) × 23.2% = 3,984,000円
となり、会社にすることによっての節税効果があるように見えます。
一方で所得500万円のケースではいかがでしょうか?
【個人】
5,000,000円 × 20% – 427,500円 = 572,500円
【法人】
5,000,000円 × 15% = 750,000円
となり、個人事業の方が節税効果が高いことが分かります。
社会保険料の面や法人の方が経費算入範囲が広いなど、様々な条件によって有利不利は変わりますので、まずは作ろうとする事業の規模をシミュレーションして起業に備えてください。
副業会社経営のメリット・デメリット
たとえ副業だとしても会社をつくるということは、一国一城の主になるということです。代表取締役という肩書きを得るのと同時に会社の事業や経営に大きな責任が伴います。
副業としてどのような経営をしていくのか、よく見極めたうえでの起業がとても重要です。
副業として起業することにはメリットもデメリットもあります。
メリット
・代表取締役社長、代表社員(合同会社の場合)の肩書きを得ることができる
・本業の収入を維持しながら別事業にチャレンジできるので、リスクが比較的低い
・事業の成功により所得を増やすことができる
デメリット
・夜間や休日など、業務以外の時間を会社経営に費やさなければならず、ライフワークバランスが崩れるおそれがある。
・法人の場合、赤字であっても法人住民税の納税義務がある。
・本業に従事している間は副業は停止せざるを得ず、事業が停滞しがちになってしまう。
本業、家庭とのバランス
ご家族がいる方が副業を起業する場合には家族の理解が不可欠です。
家族のサポートを得ることができれば、ぐっと経営の安定感が増すと思います。
一方で、家族の協力が得られない状態で起業する場合、前述したように重圧を背負ったうえで、家族との関係もぎくしゃくし、なかなか成果をあげることができないと思うので、そのあたりのバランスが重要です。
副業の会社設立は基本的にバレます
本業の会社にバレないようにこっそり起業したいという方もいらっしゃると思います。
どんな会社もそうですが、代表取締役は様々な場面で名前を出す必要に迫られます。ひとり起業のケースだと、手続きなどのたびに必ず名前を出さなければならないので、バレる可能性はかなり大きくなると思います。
また、会社から一定額以上の給与や報酬を得ると社会保険料の合算が必要だったり、住民税の特別徴収が合算されたりと罠がたくさんあります。
一応の対策としては、副業の会社から得る給与報酬を最低限にしたり確定申告時に住民税を普通徴収にしておくなどすると良いかもしれません。
できることならば、会社には情報を共有しておいたほうが良いと思います。
会社形態の選択
副業で起業する場合、ほとんどが「株式会社」か「合同会社」を選択されると思います。
設立費用や手続きは別の記事で詳しく解説しますが、それぞれに長所短所があるので、こちらもしっかりと検討した方がいいですね。
「代表取締役」と名乗りたいならば、株式会社一択です。
まとめ
ここまで読んでいただいて、お解りいただけると思いますが、会社にバレないようにこっそり起業するのはオススメしません。事業、顧客の衝突や会社の考え方によっては大きなトラブルになる恐れがあるからです。
現在は副業を促進するというのが世の中的な風潮です。副業に協力的な会社も増えていますので、どうしても難しい場合は、そのような会社に移籍することも一つの手段として検討してみても良いかもしれません。